伝説的ジャズ・ピアニストであり、一方では破滅的な人生を歩んだ人物としても知られるビル・エヴァンス。ドラッグに溺れ、晩年は顔や指が酷く浮腫み、体調も非常に悪かったそうだ。それでもピアノの前に座ると別人のようになり素晴らしい演奏を聴かせたという。
物静かで大人しい人物だった(と周りから見られていた)ビルは、若くしてヘロインに手を出した。それにはフィリー・ジョー・ジョーンズの影響があるとか。エヴァンス・トリオの初期メンバーだったスコット・ラファロが1961年に交通事故死した後、ヘロインの服用量はさらに増えていったという。恋人のエレイン・ショルツもヘロイン中毒者であり、70年代初期には2人して逮捕されたこともあるようだ。
1973年、内縁関係にあったエレインが地下鉄で投身自殺をしたことで、ビルは精神的に不安定になり始める。メサドン療法(トラマドールなど癌疼痛などに使われるオピオイド鎮痛薬を投与することでヘロイン中毒症状を緩和させながら脱依存へと導く方法)を開始していたビルだったが、この件で再びヘロインに手を出した時期があったようだ。
その後、ビルは、ネネット・ザザーラと結婚して子供を儲けると、メサドン療法を続けてヘロインを断つことに成功した。しかし、今度はコカインに手を出し常習的に服用してしまう。度重なる不幸やドラッグの影響もあったのだろうが、生きることを完全に放棄してしまった決定的な理由は、統合失調症に苦しんでいた兄ハリーの拳銃自殺だったという。
ビルはドラッグや不摂生により慢性肝炎や潰瘍などを患っていたが、兄の死後、治療を自発的にやめてしまったと義理の姉パット・エヴァンスはコメントしている。兄の死をきっかけに、ビルは心身共に体調が一気に悪化していったようだ。
1980年9月15日、体調が急変してニューヨークのマウントサイナイ病院に連れていかれたビルだが、その日の午後に亡くなった。死因は、消化性潰瘍、肝硬変、気管支肺炎、及び未治療の肝炎によるものだったそうだ。
ここで紹介するブート盤2種は、ビルの死の2年前に録音された来日公演の音源を収録したものである。
LIVE AT ALTEC 1978 (EVSD-1474)
DISC 1
1. The Peacooks
2. Theme From M.a.s.h.
3. Detour Ahead
4. Emily
5. In Your Own Sweet Way
6. But Beautiful
7. My Romance
Recorded live at Modern Jazz & Coffee "Altec", Young Plaza 2F, Kochi, Japan 1st Set - 10th Sep 1978
DISC 2
1. Mornin' Glory
2. Up With The Lake
3. Turn Out The Stars / I Should Care
4. I Do It For Your Love
5. Someday My Prince Will Come
6. Minah (all Mine)
7. Nardis
Recorded live at Modern Jazz & Coffee "Altec", Young Plaza 2F, Kochi, Japan 2nd Set - 10th Sep 1978
Bill Evans : piano
Marc Johnson : bass
Philly Joe Jones : drums
EMPRESS VALLEY SUPREME DISCレーベル、プレス盤2CD。ペーパースリーヴ仕様。久しぶりにブート盤を2つ紹介します。
まず1枚目は、ビル・エヴァンス・トリオの最後の来日公演より、1978年9月10日高知アルテック公演を関係者からの流出サウンドボード録音で収録。出回っていた音源のアップグレード版で正しいデータに修正されてリリースされたもの。
ビルはこの時点でドラッグに溺れ、顔や指が酷く浮腫み、体調も非常に悪かったそうだ。それでもピアノの前に座ると別人のようになり素晴らしい演奏を聴かせたという。
場所となった高知アルテックは1973年創業の老舗ジャズ喫茶で、ビルを含む国内外の伝説的なジャズ・プレーヤーたちがライブを行った場所として、西のジャズファンには有名な箱だったという(2016年に閉店したようだ)。
ビル・エヴァンス・トリオ最後の来日となった1978年日本ツアーは、9月7日・松本文化音楽ホールを皮切りに9月26日・郵便貯金会館まで1ヵ月近くに渡り行われた。アルテック公演は4日目に当たる。
この時期のメンバーは流動的で、78年初旬まで在籍していたマイケル・ムーアは脱退しておりマーク・ジョンソンに変わっている。また、古くからの仲間であるフィリー・ジョー・ジョーンズが一時的に加入している。
同年1月のNY公演を収録したオフィシャル盤「Getting Sentimental」とはまた違った編成であり、このメンバーでの演奏は、現時点ではオフィシャルでは一切聴くことが出来ない(ブートやアングラでは何種類か音源が出回っております)。
「Getting Sentimental」は、テーパーのマイク・ハリスが録音した、いわゆる客席録りの音源が元になっている。マイクはフィリー・ジョーに近い位置で録音したのだろう、彼のド迫力なプレイが中心となって聴こえるバランスであった。
レビュアーに「ビルをフィーチャーしたフィリー・ジョーのアルバムであり、マイケル・ムーアのベースは時々聴こえる程度」と皮肉たっぷりにレビューされた原因も音質の悪さの為である。
その点、本作は高音質SBDでバランスも問題なし。それでもフィリー・ジョーの音が目立つ辺り彼のプレイの凄まじさを感じさせてくれる・・・。
体調の悪さが伝えられる晩年のビルだが、「Getting Sentimental」「Last Concert in Germany」などで聴けるエネルギー溢れる見事なプレイと同様、高知アルテック公演でも素晴らしいプレイを披露している。満身創痍で2年後に亡くなる人物の演奏とはとても思えない気迫と集中力だ。
論より証拠!ビル・エヴァンス・トリオのアルテック公演から、1st SETの音源をアップします。気に入られた方や2nd SETも聴きたい方はBFでこうてあげてください、ほなどうぞ🤤
ALTEC 1978
ジャケットの裏側。
ディスク盤面。では、続いて13日大阪公演の音源の紹介です。
OSAKA 1978 (COJ-020)
Disc 1 -1st Show-
1. Introduction
2. Midnight Mood
3. The Peacocks
4. Theme From M.a.s.h
5. Gary's Theme
6. In Your Own Sweet Way
7. But Beautiful
8. My Romance
9. First Show Outro
Disc 2 2nd Show-
1. Introduction
2. Unknowm Title
3. Up With The Lark
4. Morning Glory
5. Someday My Prince Will Come
6. I Do It For Your Love
7. Nardis
8. When I Fall In Love
COURIERS OF JAZZレーベル、2CDR。1978年最後の来日公演より、9月13日、大阪厚生年金会館でのライブを、同レーベ ル・オリジナルの70年代に多くのジャズ・ジャイアンツの来日公演を録音、その類まれなる音質の素晴らしさで多くのジャズ・ファンを唸らせた名テーパー所有のオープンリール・マスターから、驚異的な極上レベルの超高音質オーディエンス録音で完全収録。
この日の音源も、世界中のエヴァンス・ファンに衝撃を与えた同レーベルが数年前にリリースした「大阪1978」(COJ-003)と同一ですが、既発盤は1999年に録音者が変換したものを使用していました。今回はリール・マスターそのものを最新機材を用いて24bitリマスタリングを施した、既発盤とは明らかに一線を画すハイクオリティーな極上サウンドでのリリース。
最新機材を使用し24bitリマスタリングを施された音質は、高音質が当たり前の最新録音と比べても遜色ありません。音の輪郭もはっきりとしたダイナミックで奥行きのあるサウンド、分離感やバランスの良さも際立ち、その差は一目瞭然。
チケット販売当初はマイケル・ムーアが来日予定メンバーだったそうですが、この年の4月から加入したマーク・ジョンソンに、名ドラマー、フィリー・ジョー・ジョーンズとのライブならではの緊張感のある素晴らしい演奏で、ビル・エヴァンスの類い希なる繊細なタッチも見事なまでに聴きとることが出来、奥深いプレイの数々に酔いしれてしまう好演です。
オーディエンス録音ならではの広がりのある臨場感溢れるサウンドで、優美なエヴァンスのピアノ を存分に堪能出来ます。現在でも1978年に行われた大阪公演は、このアイテムでしか聴くことが出来ないウルトラ・レアな音源です。2012年24bit/96khzデジタル・リマスタリング。帯付き仕様・完全初回生産限定盤。
では、音源をどうぞ。
Disc1
Disc2
ジャケット裏面。
ディスク盤面。以上です、久々の音源投稿でした😃